数学 I
数と式  数学は計算の科目とも言える。ここで学習する展開や因数分解の公式,計算における工夫,絶対値の扱い方などは,高校数学の全単元で必要になる。
数学 II の「式の計算と証明」で学習する『整式の除法・分数式』についても,ここで同時に学習しておくことを薦める。計算力は若ければ若いほど身につくものであるし,特に物理の履修を考えている人は,物理は分数式計算が素早く出来ないと話にならないという理由もあるからだ。

 計算は出来て当たり前である。試験時間の限られている入学試験では,そのスピードと確実さが要求されることを 常に念頭において受験勉強を進めていってもらいたい。
方程式と不等式  1次不等式は,旧課程では中学で学習していた事柄である。それだけ数学,いや,理系科目の基礎ということである。 これも解けたらいいというものではなく, 2x-3>4x-5 程度は『暗算で』 x<1 と即答できるように鍛えておかないといけない。

 2次方程式については,現行課程では数学 I と数学 II に分断されてしまっており,高校数学におけるその重要さが見えなくなっている。
数学 II 「複素数と方程式」の複素数・判別式・解と係数の関係を先取り学習しておくことを強く薦める。
2次関数  上の2次方程式で書いたことと重複するが,2次関数・2次方程式(複素数解を含む)・2次不等式で一つの単元を形成していると考えて欲しい。
 『限られた区間で常に成り立つ2次不等式』の問題は,本質は2次関数の問題であり,『2次方程式の解の配置問題』も同様である。

 また,数学 II においてはいろいろな方程式・不等式・最大最小問題を学習するのだが,例えば sinθ=x と置き換えることで,2次方程式・2次不等式・2次関数の問題に変わるものが非常に多い。高校代数の基本であるので,学校の定期試験が終わってからも常に復習しておかないと,数学 II がついていけなくなることを警告しておく。

 平方完成については,高校3年間で決して大袈裟ではなく数百回行うことになるので,1行ないし2行でスラスラと出来るように練習しておくこと。
図形と計量  前半の「三角比とその値」については,数学 II の三角関数でも,角度を180°以上に拡張して同じことを学習するので,余裕があれば数学 II の一般角を先取り学習し,数学 II の同様な問題まであたっておくのもいいかと思う。

 正弦定理・余弦定理については,2次関数と違い,入試において数学 II の三角関数以外の他の単元と融合することは少なく,これだけで入試問題の大問1つとして出題されることが多い。総合参考書で典型問題を一通り学習した後,センター試験の過去問にあたり,確実な得点源にしておこう。
数学A
集合  ∩や⊂などいろいろな記号が出てくるが,それらの記号の意味を正確に理解し使えるように練習しよう。
特に場合の数では,問題文から自分でベン図を書いてド・モルガンの法則や n(A∪B)=n(A)+n(B)-n(A∩B) を使うことも多いので,これらの公式はしっかりとマスターしておこう。
論理と証明

 難関大入試において,証明問題が合否の分かれ目となるといっても過言ではない。ここでは対偶による証明と背理法を学習するが,他にも II,B,III の複数の単元でいろいろな証明法を学習することになる。ある命題を証明するのに,どの証明法を適用するべきかの見極めが難しいのである。
 新たな証明法を学習するたびに,それを使って証明する典型問題をいくつかまとめておくとよい。

 難関大入試においては「整数問題」が頻出で,かつ合否を決める問題になっている。背理法や対偶による証明以外にも数B「数列」で学習する数学的帰納法や,他のいろいろな証明法を用いることになるのだが,教科書・総合参考書のレベルを越えるので,早期からの受験対策本による学習が必要である。一筋縄ではいかないことを警告しておく。

場合の数
確率
平面図形
 現行課程の数学Aで学習することがらは,実は25年前の課程ではその殆どが小学校・中学校で学習し終えていたものなのである。集合や場合の数,確率,初等幾何というものは,小学生・中学生が数学的論理にしたがった考え方を鍛えるのに適した単元なのであるが,ゆとりの名の下にそれらを先送りにした吹き溜まりが数学Aなのだ。ゆとり教育は数学的センスを身につける機会を奪っているのである。 一日でも早く,若く頭が柔らかいうちに学習を始めて欲しいとしか言えません。
数学 II
式の計算と証明  旧課程においては高校1年で学習していたものである。
整式の除法・分数式の計算については,数学 I ,Aの知識を一切必要としないので,1年次の早期に学習しておくべきである。

 恒等式と等式の証明についても,数学 I ,A とは関連がないので,1年次の先取り学習は可能である。

 不等式の証明には,数学 I の因数分解,平方完成が必要になる問題が多いので,数 I でそれらを学習後に,計算練習を兼ねて先取り学習しておいてもらいたいところだ。
難関大入試において不等式の証明は頻出だが,その基本となる考え方をここで学習することになる。早期対策が肝要。
複素数と方程式  複素数,2次方程式の判別式,解と係数の関係については,数学 I の2次関数・2次方程式・2次不等式と同時に学習しておくべきである。

 高次方程式の応用問題では,数学 I で学習した因数分解や,対称式の計算,判別式などを使う問題もあり,高校代数の姿をかいま見ることができ,高校数学の面白さも感じることが出来るかと思う。
図形と方程式  円と直線の位置関係の問題は,判別式ではなく,中心と直線の距離と半径を比較する解法でないと,複数の文字が入る入試問題には対応できない。

 軌跡・領域の応用問題には,2次方程式の判別式や解と係数の関係が絡んでくるものもあり,それらの基礎力がある人にとっては面白い単元であるかと思う。
三角関数  公式がたくさんでてくる単元である。しかし,暗記しておかないといけないものは僅かである。

まずは,sinθ,cosθ,tanθの単位円における定義をしっかりと理解すること。
sinθ<1/2 レベルの最も単純な三角方程式・不等式はグラフではなく,単位円を利用して解くこと。
sin(θ+π/2) などの余角公式・補角公式も単位円を利用してすぐに導けるものなので,覚える必要はない。

加法定理と合成公式は暗記しておかなければいけない公式である。
倍角公式・半角公式については,最初のうちは加法定理からその都度導き,練習を積むうちに覚えてしまった,というようになるのが理想である。

和積公式と積和公式は,加法定理から20秒もあれば導けるので,これらも覚える必要はない。ただし,公式の『左辺』は覚えておくべきである。そうでないと,使うべきときに使えない。

指数・対数関数もそうだが,sinx=t と置き換えて,t の2次方程式・不等式・2次関数の問題になるものが多く,それらの基礎力が大きく関わってくる。
指数・対数関数

 ゲーム性の高い単元である。指数や対数の計算法則を将棋やチェスのようなゲームのルールと理解し,駒の動かし方と基本的な戦術をマスターすれば,さほど難しい単元ではない。

a-1=1/a は思っている以上に重要なルールである。「-1乗は逆数のこと」と押さえること。
2-(1/4) =
1/16 と間違えてしまう原因はここにある。2-(1/4) は 21/4 の-1乗,つまり21/4 の逆数であり,1/(4√2) である。

対数についても,頭が混乱したときは,『log28=3 ⇔ 23=8』 に返って落ち着いて考えれば,ケアレスミスは避けられよう。

 指導経験から,1ヶ月もすればすぐルールを忘れてしまう人が多いように感じる。こまめな復習が大切である。

微分・積分  中学・高校で学習してきた代数学の最終目標の単元であり,文系入試においては必ず出題される。
3次関数の微分の応用問題は,その多くは本質は2次関数・2次方程式・不等式の問題であるので,それらの単元の基礎力があるかないかで理解度が大きく変わってくる。

積分の面積については出題パターンがほぼ決まっているので,典型問題を確実にマスターしよう。
面積公式は複数あるが,知っておくと特にセンター試験で有利である。
「定積分で表された関数」の問題で点差が開くと思われる。
数学B
ベクトル  記述試験においてほぼ確実に出題される単元である。
平面上の点の位置ベクトルは2つのベクトルの線形結合で,空間は3つで表すことにより,図形問題を計算で解決するのだという学習目的が見えてない人が多いように感じる。その本質を理解している人にとっては, 垂直条件・共線条件・共面条件を使うだけのことであり,大きな得点源になる。

 独立した単元なので,cosθ=1/2 程度の簡単な三角方程式が解けるのであれば,1年次での学習は可能である。
数列  習熟するのに多くの練習量を必要とする単元である。そのためもあってか,旧課程では1年次に学習していた。新課程入試においては合否を決する単元になるのではないだろうか。
数 I ,Aとは独立した単元であるので,1年次での学習は可能である。

 数 III では数列をさらに深く学ぶことになるので,生半可な理解では数 III の学習に支障を生じる。理系の人は早期に学習し,数 III の学習に入るまでに練習を多く積んでおいてもらいたい。

 数学的帰納法については難関大では証明問題として他の単元と融合されてよく出題されるので,特に不等式の証明は練習を積んでおくこと。
数学 III
極限  入試では教科書や総合参考書に載っているような問題で出題されることは少なく,微分積分と融合されて出題される。入試で極限を求めるときは,「はさみうちの原理」を用いることが多いのだが,何と何ではさめばいいのかが難しい。入試レベルの問題をどれだけ演習する時間がとれるかが合否を大きく左右する。
本格的な受験対策は,微分積分学習後に行うのが望ましい。
微分法とその応用  数学 II の三角・指数・対数・微積が定着している人にとっては,微分計算さえマスターすれば,数 II の微分の応用と同じことであり,抵抗なく学習できる。
もしも極値問題や最大最小問題が全くわからないならば,それは数 III が難しいのではなく,数 I , II の学習が不十分であるためなので,そちらを立て直した方が結果として速い。

「平均値の定理」は,「はさみうちの原理」と同じく,理論的なこだわりは捨てて,まずは『慣れる』という姿勢の方が理解度は高まるように感じる。
積分法とその応用  積分計算を習熟するには,微分計算とは比較にならないくらい多くの練習が必要である。時間の限られた入試勉強においては,面積・体積・曲線の長さの求値問題を積分計算の練習ととらえて,それらの問題で練習を積むというアプローチが有効と思われる。もっとも,『次の定積分を求めよ』というかなり高難度の積分計算問題も出題されることもあり,それはそれで対策が必要である。

数 II の積分と同じく,点差が開くのは面積・体積・曲線の長さではなく,「定積分で表された関数」や「定積分の不等式の証明」である。これらは,教科書・総合参考書レベルの学習では難関大入試にはとても太刀打ちできない。 1日でも早く教科書・総合参考書レベルをクリアし,実戦演習をどれだけ積むことが出来るかにかかっている。
数学C
行列とその応用  2×2行列が中心だが,大学によっては3×3行列を頻繁に出題するところもあり,志望校の傾向を調べておく必要がある。

 行列方程式やAn 計算ではさほど点差は開かず,証明問題で差が顕著に表れるであろう。これも志望校の過去問を調べ,よく出題されるようならば,少なくとも総合参考書レベルはスラスラ証明できるようにしておこう。
いろいろな曲線  出題頻度が少ないこともあって,あまり演習に時間をとれない単元である。
少なくとも総合参考書レベルは一通りあたっておきたいところだ。出題されないことを祈る。