以下に述べることは入試において点を取るための「受験数学」の勉強法であり,「数学」の学習法ではないというご意見をお持ちの指導者の方もおられることを最初に断っておきます。
「ひらめき」とは何か?

数学の問題を解くときに,「ひらめかないんだけど、どうすればいいの?」と思ったことはありませんか?
失礼ですが、そう思った人は受験数学を勘違いしています。一部の大学のさらに一部の入試問題を除いて、問題を解くのに必要なのは「ひらめき」ではありません。

例えば 「x/2=y/3=z/3のとき、(x^2+y^2+z^2)/(xy+yz+zx) の値を求めよ 」
という問題は, x/2=y/3=z/3=k とおくことは,これをお読みの方には当たり前のことと思います。

でも,中学1,2年生にとってはどうでしょう?
「どうして,そんなこと 『ひらめく』の?」 と不思議に感じる中学生が多いのではないでしょか? 彼らになんと答えます? 「解いたことがあるから…」としか,答えようがないのではないでしょうか?
最初にこの問題にあたったときに,まさか自分で =k とおくことに思いついた人はほとんどいないでしょう。 学校か塾の授業か,参考書か,いつ初めて教わったのかは覚えてないが,いつか「解き方を知って」それを覚えているだけのことではないでしょうか?

「x^2+xy+y^2=3 のとき,xy-2x-2y の最大最小を求めよ」 という問題も
x+y=u , xy=v として,t^2-ut+v=0 の判別式より v≦(1/4)u^2 を出して,条件式を u^2-v=3 として・・・
というのは,一度解いたことがあり,それをしっかりと覚えている人にとっては,先の =k とするのと同じ感覚なのですが,初めて見る人にとっては「ひらめき」のオンパレードに感じると思います。

つまり,解いたことのある問題を増やせば「ひらめく」というだけのことです。「ひらめかないから数学ができない」と思っている人にとっての「ひらめき」とは「経験値」と同じものなのです。
大学入試でいう「ひらめき」とか「思考力」というのは,何も無い状態からの「ひらめき」「思考力」ではなくて、『すでに作ってくれてる思考法・解法が身についているか、それらの簡単な応用ができるかどうか』ということなのです。

典型問題の種類およびその解法を覚える

「ひらめきがないけどどうすればいいの?」というのは、「経験値がない」つまり「勉強していないけどどうすればいい?」と言っていることと同じです。 ということは,勉強して問題の解法を覚えればいいだけのことですね。

誤解している人が多いようなので念のためことわっておきますが,ここでいう「覚える」というのは,英単語を覚えるとか,円周率を小数第1000位まで覚えるという意味での「覚える」ではありません。
車の運転の仕方を覚えるとか,カレーライスの作り方を覚えるという使い方の「覚える」です。つまり,「全体の流れの中での個々の作業の論理的意味を理解しつつ練習を繰り返し,何も頼らず自分で出来るようになる」という意味での「覚える」です。

では,どういった問題をいくつくらい覚えればいいのでしょう?
大学入試というものが始まってから,過去すべての大学で出題されたすべての数学の入試問題っていったい何問ほどあるのでしょう? 
想像もつきませんが,何十万問ということにしておきましょう。 でもそれら何十万問を同じような問題でグループ分けすればたかだか数百種類ほどにしかならないはずです。その数百種類の中でも,特に頻出度の高いものを「典型問題」といいます。難問と呼ばれるものもそれらの典型問題が組み合わさっているだけですので,これら典型問題の解法を「覚える」ことが受験勉強の第1歩となります。

典型問題を集めたものがいわゆる参考書です。掲載されている典型問題の難易度によって,いろいろなレベルのものが用意されています。ここで注意しておきたいことは,自分はかなり難易度の高い大学を志望するからといって,いきなりハイレベルの参考書から勉強しても意味がないということです。

典型問題を難易度順に並べたとして,例えば難易度300番目の典型問題を解くには,それより簡単な1番〜299番までの典型問題が解ける必要があります。何故なら,難易度が高い典型問題はそれよりも簡単な典型問題が組み合わさっているのですが,ハイレベルの参考書は,典型問題の中でも簡単なものはカットしているからです。
自分の現状の学力に適した参考書で勉強することが大切です。

「わかる」と「できる」は違う

さて,参考書で勉強していくわけですが,その際の注意をいくつか書きます。
多くの参考書は1ページに例題とその解説・解答,その下にその類題の練習問題というレイアウトになっています。

例題は読むものです。じっくり読んで何故その公式・定理を使うのかなどの論理の流れ(解法)を理解してください。

次に解法が使えるかどうかの確認のために練習問題を解きます。 問題の要点をノートに写し,必ず参考書は閉じて解きましょう。

簡単な問題であれば,スラスラと答が求まるでしょう。解答集で答え合わせをしたときに,答えがあっていたときも,解答・解説部分は読んで,その通りに解いたかを確認してください。 簡単な問題であればあるほど,間違った解法を身につけてしまうと後で取り返しのつかないことになるからです。

練習問題を解いていて手が止まることもあるでしょう。
基礎・標準レベルの参考書で基礎力を養成している時期に,10分も20分もどうしたものかとウンウン唸るのは,それは勉強ではありません。 ただの時間潰しです。1分間手が止まったら,さっさと解答を見ましょう
問題はそのときの対処です。

参考書で勉強しているのに,一向に数学が出来るようにならない」という人はこうです。 解答を読んで,「なるほどわかった」と納得し, おもむろに赤のボールペンを取り出して,解答をノートに写すのです。写し終わったら次の問題へ・・・。

解答・解説を読んで解き方が「わかる」のは当たり前です。 解答・解説というのはわかってもらうために詳しく書かれているのですから。逆に解答を読んでもわからないのなら,それはその参考書で勉強するレベルに達していないということですから,さらにレベルを落とした参考書から勉強しないといけないということです。 「なるほど,わかった」は勉強ではありません。

わからなかった問題を,自分ひとりで「できる」ようにすることが勉強です。

練習問題を解いていて,1分間手が止まったら,解答集を開き,自分が詰まっていた箇所の次の数行を読みます。それからの解法の方針がわかった時点で,解答は最後まで読まないで,再び解答を閉じてノートに(もちろん普通のシャーペンで)さっきの続きから解きます。 難しめの問題なら,また手が止まるかもしれません。そのときは同じことの繰り返しです。

そして,このように途中で解答を見た問題,および,答は出したけれど間違っていた問題(ケアレスミスも含む)は,問題番号に印をつけておいて,後日必ず復習してください。

最初に解けた問題であっても,そのときは例題の解答を見た直後であったことを忘れてはいけません。 必ず数日後に本当に「できる」かのチェックをしましょう。

困ったことに人間の脳味噌はすぐに忘れる仕組みになっています。
生存に欠かせない食事ですら,10日前の夕食に何を食べたのかなんて,誕生日とかのよほどの理由がないかぎり忘れてますね。ましてや数学なんて・・・です。

一番悲しいのは,せっかく「できる」ようになった問題が,時とともにできなくなってしまうことです。「できる」ように頑張った努力が無駄になったということです。

復習こそが受験勉強です

数ヶ月ごとのこまめな復習,以前解けた問題が今でもちゃんと解けるかの確認,これは受験勉強に欠かせないことです。そして,それら復習をきちんとこなせるような学習の計画性が重要です。

点が取れなければ意味がない

さらに,注意点があります。
問題が「できる」ようになったからといって安心はできません。確実に「点が取れる」ようにしなければいけないのです。
記述試験の場合は,本人は「できた」と思っていても,説明不足などの理由で減点されるかもしれません。
特に数学が得意と思っている人に多いのですが,答が数式だけというのは答案ではありません。 要所要所で考え方の流れを言葉で説明しなくてはいけません。 参考書・問題集の模範解答を参考に,日本語も鍛えてください。

また,入試には制限時間があります。「あと5分あればできたのに・・・」では後の祭りです。 そうならないためには,常日頃から計算のスピードを意識して勉強しましょう。
煩雑な計算をめんどくさがって自分でやらずに,「解答と考え方が合っているからいいだろう。こんな計算やるのは時間の無駄」などということは言語道断です。 計算力も何もしないでいると衰えていくものです。

「点が取れる」ようになる対策としては,模擬試験や通信添削などが有効かと思います。