現役高校生への警鐘 −現行指導要綱の問題点−

数学 IA・IIB の問題点

指導要綱改定に伴い,数学においては以下の内容が中学から高校への『学習の先送り』がなされました。

移行する内容(学年)   移行後の単元(科目)
三角形の重心(中2) 平面図形(数学 A)
一元一次不等式(中2) 方程式と不等式(数学 I)
2次方程式の解の公式(中3) 方程式と不等式(数学 I)
無理数の演算(中3) 方程式と不等式(数学 I)
相似な図形の面積,体積比(中3) 図形と計量(数学 I)
円に内接する四角形など(中3) 平面図形(数学 A)
事象と関数(中1〜3) 2次関数(数学T)

中学での数学の授業時間を減らし,「ゆとり」を持たせたための移行措置ですが,いずれの内容も高校数学の代数分野,図形分野の土台となる考え方であり,現在の高校生は「高校数学の基礎となる,本来中学で習得してしかるべき内容」を学習せず高校に入学することになってしまいました。

高校数学の指導要綱も大きく改正されました。変更点は以下の通りです。

【 旧課程数学 IA・IIB の内容 】
数学T(週4時間) 1.数と式 2.2次関数 3.図形と計量 4.場合の数と確率
数学A(週2時間) 1.式と証明 2.論理と集合 3.数列
   
数学U(週3時間) 1.図形と方程式 2.三角関数 3.指数・対数関数
4.微分法・積分法
数学B(週2時間) 1.平面ベクトル 2.空間ベクトル 3.複素数と方程式
4.複素数平面
【 新課程数学 IA・IIB の内容 】
数学T(週3時間) 1.方程式と不等式 2.2次関数 3.図形と計量
数学A(週2時間) 1.場合の数と確率 2.論理と集合 3.平面図形
   
数学U(週4時間) 1.式と証明 2.複素数と方程式 3.図形と方程式
4.三角関数 5.指数・対数関数 6.微分法・積分法
数学B(週2時間) 1.平面ベクトル 2.空間ベクトル 3.数列

高校内容においては削除された単元があるものの数Cで新しく加わった単元もあり,数学TAUBVC全体で見ると分量の変化はさほどないと言って良いでしょう。つまり,中学から移行してきた分だけ,高校で新たに習得しなければならない内容は増えたということです。

これを読んだ高1生諸君は「そんなにしんどくないけどなぁ」と思うことでしょう。それは当然です。新課程においては,高1の内容は劇的と言えるほど簡単になっているのです。

例えば,数学Aの『平面幾何』の多くの内容や数学Tの『一次不等式・解の公式』は,旧課程では小学校・中学校で学習していた内容です。
旧課程と同じ単元でも内容が薄く,簡単になりました。
『教科書傍用問題集から見た新課程TAの問題点』を参照してください。 皆さんが高1で学習した内容が「いかに軽くされたか」が分かります。 本来高校1年で学習すべき内容を削られ,かつ内容も薄くされた結果,皆さんの学力・習得力は本来するはずであった成長を妨げられてしまっているのです!

そして新課程数学IIは2章増えています。授業時間も増えたのですが2年次に習得すべき内容が2章分増えたのは間違いないですね。たった2章と思う方もいるかもしれませんが,数II・Bの内容の深さ・分量は旧課程と同じで,数I・Aのように軽く薄くなってはいません。

失礼ながら新課程生の習得力(学習力)から考えて,「高2で学習する数II・B の分量と内容の重さはきちんと習得することが難しく,高3で一から出直しせざるを得ない生徒が多いのではないか?」と多くの指導者は感じていますし,私達は実際そのような生徒さんを多く知っています。

新課程は

高校1年まで楽勝,のんびりムード(で学力を落として)
  ⇒ 高校2年は分量・質ともかなりキツイ

課程なのです。

公立高校の多くは,それを見越して1年次後半から数II・B の内容に入りますが,それでも特に高2の後半はかなりペースアップせねば2年生の内に数II・B が終われないのが現状です。
ある高校では「ここは難しいからカット」を繰り返し,まともに授業が終わった単元はないのでは?と思われるほどです。
また,ある高校ではとてつもなく早いペースで授業を進めることによって無理やり終わらせてしまいます。しかし,「授業は進んだけど,進度が速すぎて生徒の頭の中はスッカラカン (失礼!)」になりがちなようです。

高校1年生のうちから,学校に頼らずに「先を見越した学習」を自分で進めなければ難関大入試には対応できません。

リュケイオン運営HP「高校数学の自習室」では,以上の状況を踏まえた上での高校数学の学習法を提案しています。