『高校物理の自習室-Eureka』 開設宣言

物理は,人類が作り上げた非常に美しい論理体系です。 物理を勉強するとは,その論理体系を理解すること,その体系に従った物の見方・考え方を養うことです。

 物理の原理や公式はただ暗記しても意味がありません。
例えば 一様な電場における電位差 V=Ed は,ものの3秒で覚えることが出来るでしょう。 しかし,電位差Vとは何か,Eとは何か,dとはどこの距離をいっているのか,をわかっていないと問題は解けないし,さらには,これは一様な場での1[C]あたりの位置エネルギーのことであり,重力による位置エネルギー U=mgh とその本質は同じであることまで理解しないと,物理体系を学んだことにはなりません。物理を学習するとは,概念の理解に他ならないのです。

そのような物理の概念は,理論の理解と問題演習の相乗効果で身についていくものです。
まず教科書・参考書などで理論を学習し,問題集で問題を演習することでその理論の意味を具体的に理解する。逆に問題を演習することで,「なるほど,このような局面でこの原理を用いるのか」と,理論の理解をより理解を深めていく。このように, 演習量が多ければ多い程,物理の理解は深まっていくのです。

入試で物理を選択する受験生は,センター試験のみという人を除き,大学で理系学部に進学することを希望されているわけですが,何学部であろうと,大学で学ぶ内容には多かれ少なかれ物理が関わってきます。
物理の入試勉強は,ただ入試で点を取るためのものではなく,科学者・技術者としての,物の見方の素養を身につけることだと私達は考えます。

私達がこのHPを開設するに至ったきっかけは,『新課程物理教育の酷さ,新課程教材の酷さ』につきます。

過去の指導要領改訂では物理はさほど大きな変更はなく,過去20年ほど中学・高校物理の教科書は似たようなものでした。BESTではないかもしれないが,とりたてて悪いところもなく,物理体系を学ぶことができ,大学に入ってからより高度な科学を学習する上での基礎学力,サイエンティストになるための素養を身につけることができたと思います。

しかし,新課程になって物理教育は崩壊しました。 高校物理の旧課程からの主な変更点は以下のとおりです。

  1. 『運動量と力積』が物理 I から物理 II に配置換えになった。
  2. 小学・中学内容であった,ソレノイド(電磁石)やフレミングの法則などの磁気の基本が 物理 I に持ち上がった。
  3. 『電気のクーロン力』,『点電荷の作る電界・電位』,『コンデンサ』など,電気の基本が物理 I から物理 II に配置換えになった。

新課程の欠陥を簡単に述べると,

  • 旧小学・中学内容が物理 I に持ち上がったために,力学の運動量や電磁気の電界・電位などの高校物理の土台となるべき重要項目が物理 II に回ってしまった。
  • フレミングの法則や電磁誘導などは,物理 I で旧中学内容を学習し,物理 II で高校内容を学習するという,非常に無駄の多い非合理的な学習配列になってしまい,物理体系の統一的理解の妨げにさえなっている。

ということになるかと思います。

高校物理の主要事項,つまりは入試で問われる事柄のほとんどが物理 II に回されてしまいました。「入試物理=物理 II 」と言っても過言ではないと思います。
 指導要領どおり,高校3年生から物理 II の学習を始めていては,物理 II の分量の多さのため全単元の学習の終了が遅れ,最も必要であろう入試問題演習の期間が短くなる(もしくはできない)ことが予想されます。
物理 II の学習が3年からである学校ならば,授業を先取りして独習が必要になることは言うまでもないでしょう。また,仮に学校進度が速くても,それだけ1回の授業の密度が濃いわけですから,知識定着のためには復習(独習)が必要です。

実は私たちは,新課程導入当初は「新課程になっても,旧課程時と同じように,本屋で購入できる初学者向けの参考書はたくさんでるだろう」とタカをくくっていました。「この教材で勉強しなさい」と指示すれば大丈夫な教材があると信じていました。

ところが,新課程導入2年後に実際に書店に行ってみると,現状は酷いものでした。受験用参考書としてはある程度良いものが出揃っていましたが,初学者用の参考書はたった2種類という有り様でした。しかもその内容たるや,高校物理指導者ならば誰しもが『ここは強調したい』と思うであろう箇所が目を凝らせて探せば見つかるような小さい扱いになっていたり,あるいは全く触れていなかったり,また,どちらも非合理的な新課程配列に従っていて,物理 I の1ページからやっているようでは,物理の本質が掴めない構成になっており,とてもお奨めできるものではありませんでした。

 ならばどうするか?
新矢&kinopy は,自分達で物理の教科書を作ることを決心しました。ですが, 一から作るのですから全単元が完成するのはいつになることか我々にも予想がつきません。
そこで,今現在,新課程物理に苦しめられている高校生の皆さんの先取り学習をサポートすることを目的に,市販の参考書・問題集を複数用いて,初学者が独習できるような学習法を提案し,質問掲示板でフォローするようなHPを開設することを決意しました。
『高校物理の自習室−Eureka』は,初学者が物理の大海に足を踏み入れるまでのお手伝いが目的です。物理の海で泳げるようになった中級者・上級者の方のサポートはいたしません。ですので,質問掲示板もこちらで指定した初学者用の問題集の内容に限らせていただきたいと思います。

我々は物理は得意科目であり,好きな科目でした。
これは私達が「最初から物理センスが優れていた」とか「生まれもって物理的思考が身についていた」からでは決してありません。「“優れた物理指導者”の方にめぐり合ったから」なのです。お名前を服部先生とおっしゃいます。物理指導者,物理好き高校生には「あぁ…あの服部先生」と思われる方も多いでしょう。
服部先生にご指導いただいたおかげで今「高校物理の講師」として飯が食え,生徒から「先生」と呼ばれる立場にあるのです。

 このHPは我々を物理の世界に導いてくださった服部先生への“ご恩返しの気持ちを形にしたもの”とも言えます。 服部先生ほどの優れた指導者には程遠いですが,先生から学んだ物理の面白さ,奥深さそして素晴らしさを少しでも伝えることができればと思いこのHPを作成しました。

HP開設にあたり, 服部先生の言葉を引用させていただきます。
『物理は、全宇宙を対象とした、人類の壮大な切々たるロマンである!』

2005年12月 吉日 新矢&kinopy

新矢