『 速攻 数学III シリーズ 刊行に寄せて』

『速攻数学III』の著者である,新矢&kinopyは,ともに20年以上大阪の学習塾で主に公立高校生を対象に,高校数学の学習指導をしてきました(勤務先は違います)。その間,2回学習指導要領が改定されました。近々また改定を迎えますが,いくら指導要領が改定されようとも確実に言えることがあります。それは,『難関大学理系学部志望生にとって,数学IIIの先取り学習は避けて通れない』ということです。

特に難関大入試において数学IIIは出題の4割を超えることもあります。 現役で旧帝大レベルを目指すには, 他教科との兼ね合い,11月末あたりからはセンター対策に時間を取られることを 考えると,夏休みに数学IIIの入試標準レベルをどれだけこなせるかによって勝負はほぼ決まってしまうのです。ライバルは浪人生,中高一貫進学校生であることを忘れないでください。遅くとも高3の夏休みを迎えるまでに数学IIIの入試基礎レベルが定着していなければ間に合いません
  (注)この文中で言う入試基礎とは早慶以外の私立大学,地方国公立大学の入試レベルを指します。

私立進学校のように,高1で2年内容を,高2で3年内容を先取りして授業を進め,生徒の習熟度を顧みない授業が出来れば楽なのですが,塾ではそうはいきません(汗)
塾生が入塾する時期は,高1の冬からや高2の秋からなどバラバラです。運営上,数学III内容の授業は高3の四月からスタートせざるを得ません。4〜7月の4ヶ月で,教科書内容〜入試基礎を終えなければなりません。 週1回2時間という限られた時間で確実な実力を身につけられるような授業を展開するのが我々の仕事ですし,プロである塾講師が指導の際に目的とするのは,「理解させる」ではなく「生徒自身が解けるようにする」ことです。

私達は授業では市販教材を一切使用していません。なぜか?
中堅公立校で普通の成績の生徒でも現役で阪大に合格できる。そのような授業を展開する上で教材に要求されることは,知識0から入試基礎までが網羅されていること,つまづきやすい箇所・定着しにくい箇所は何度も定期的に確認できること,教科書内容から入試レベルまで,無駄なく段階的に進めること,などが条件になります。しかし,我々の知る限りそのような市販教材は存在しないのです。

高3の4〜7月の4ヶ月で教科書全内容〜入試基礎を終える。それを達成するために,これまでいろいろな問題にぶつかりました。 特にゆとり教育が施行されてからは,高3の四月入塾生の半数以上が,数学IIの知識が限りなく0に近いのです。数IIの教科書に書かれていることは,数IIIにとっての常識であり,数IIがわかっていないと,数IIIは一歩も進めません。 20年前ならば,その時点で理系は諦めろといっていましたが,学力低下が加速度的に進行している現在は,そのような学力でも,なんとか国公立大学現役合格に間に合うのです。(汗)

高3の4月の時点で,sinθ+cosθ=1 や log2x=-1/2 が解けない生徒を,夏期講習で数IIIの入試問題の演習が可能なレベルまで引き上げる。そのためには1ヶ月以内で数学IIを復習しなければいけません。 当り前のことですが,授業中に数IIの教科書内容をすべてやり直すのは時間的に不可能ですし「教科書を読んでおけ!」では何も指示しないのと同じです。数学IIIの学習に最小限必要になる数学II内容を吟味した上で活字化し,生徒に予習を義務付けたものが「数学III に最小限必要な数学II」です。

導入後,生徒の数IIIの理解度は飛躍的に上がりました。しかし,数学IIの基礎力が短期間で身についたとはいえ,実は,数IIIの教科書内容の授業で一番時間がかかるのは「微分計算」,「積分計算」なのです。しかし…教える側とすれば「たかが計算じゃないか! こんなものに,貴重な授業時間を割く必要があるのか? 生徒も計算ばっかり続いてうんざりしてるし…」というのがすべての数学講師の本音だと思います。

そこで,微分積分計算が独習できるようなテキストを作ることにしました。そのテキストで微積分計算の予習をしてもらい,授業では特に大切なところを再確認するということにしました。その意図で作られたのが「速攻数学III 微積分計算」(本書の前身であり,現在は本書の中に組み込まれています)です。 微積分計算ができるようになれば,そのグラフ・面積・体積など「微積分の応用」を主として授業で扱えばいいわけですから,この教材を導入することで大幅に授業時間が節約できました。

「数学III に最小限必要な数学II」と「速攻微積分計算」内容をマスターすれば,微積分の応用は参考書などを使い独習でできるはずだ。特に公立高校生でありながら難関大志望の人の先取り学習の一助になるはずだ。と,この2冊のネット販売を開始しました。リュケイオンのHP以外ほとんど宣伝がないにも関わらず多くの方にご購入いただきました。

しかし,我々の本心は「最小限も速攻微積分計算も準備でしかないねんなぁ…。うちらが本領発揮するのは微分の応用,積分の応用なんやけどなぁ…」でした。
先に述べたとおり新矢&kinopyは20年以上の指導経験があります。
   高3の春に sinθ=1/2 が解けない生徒を現役で阪大に合格させる!
この20年はその闘いであったとも言えます。
授業構成の工夫説明の仕方の工夫単元の学習順序の工夫など,いろいろな試行錯誤を繰り返した結果, 多くの塾生がその私たちの夢を叶えてくれました。

「速攻数学III 極限・微分法とその応用」,「速攻数学III 積分法とその応用」は,以上のような経験を積んできた我々が,今現在,毎年4〜7月に実際に行っている数IIIの授業を文書として起こしたものです。
これらは,私たちが 長年現場で培ったノウハウを余すところなく提供し,我々の授業内容・指導法を全面的に反映させ,収録内容も吟味を重ねました。例題・練習とも全て2人が実際の授業・宿題で指導している問題を採用しました。 解説部分もお互い指導法が異なる箇所についてはどちらが有効か。ということを納得いくまで話し合いました。

その結果,「数学IIIに最小限必要な数学U」も加えると,
   数学IIIに必要な数学IIの復習 ⇒ 数学III入試基礎の演習まで
を網羅し,無駄なく段階的に学習でき,重要事項は何度も確認できる,市販には決して見られない教材が完成しました。

難関大志望の方には実戦レベルへの橋渡しとして,私立大学・地方国公立大学志望の方には過去問演習に入るための教材として最良のものであると自負しています。

「週1回2時間×15週で,数IIIの入試基礎を完成する」という授業がベースなのですから,(塾生の微積分計算の予習時間も含めれば),1日2〜3時間×約30日で数IIIの入試基礎レベルまで速習できるということが,決して誇張ではないと納得していただけるかと思います。

とはいうものの,私たちは決して1日2〜3時間×約30日を薦めているわけではありません。本心は『高3の四月からスタートせざるを得ないからこれだけ苦労したのであり,数IIの微分法が終わったときに数IIIを始めることが出来れば,我々も生徒ももっと楽ができるんだよなぁ…』だったりします。
学校の授業で数IIの微分が終わったときから,数IIIの先取り学習を始めることがBESTだと思います。週2Lesson×14週(3ヶ月)のかなり余裕のある学習でも,高3の4月を迎えた頃には,数IIIの入試基礎が終わっている(中高一貫校生や浪人生と対等)という学習を可能にするという面から見てこそ,本書は『最強』であると言いたいです。なにはともあれ,

私たちが自信を持って贈るこのシリーズが,意欲的な受験生の夢実現のための一助となってくれれば幸いです。

2009年10月 吉日 新矢&kinopy


[戻る]